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2003年の世界遺産新指定サイト

2003年6月30日から7月3日にかけて、ユネスコ本部(フランスのバリ)で行われた第27回世界遺産会議において、以下の24カ所が世界遺産として追加指定されました。これにより世界遺産は、自然遺産149カ所、文化遺産582カ所、複合遺産23カ所、計754箇所になりました。(以下の内容はユネスコの公式発表内容(英仏語)を参考に私がまとめたものです。名称等の発音・表記などが違ってくる場合もありますが、ご承知おき下さい。)

新指定 自然遺産

国名 名称 概要
オーストラリア
Australia
 
プーヌルル
国立公園
Purnululu National Park 
ウエスタン・オーストラリア州の北東に位置する239723ヘクタールの広大な国立公園。数十年前までその存在を先住民にしか知られていなかったというここは生物学的、地質学的、気象学的に貴重な様々な造形物が見られる場所です。2千万年以上前のデボン期の石英砂岩の中に光合成をしていた単細胞生物の化石が判別できるダークグレイのカルスト地形が円錐または塔状になっている地形など特異な地質的造形物に溢れています。
中国
China
 
雲南保護区の
三江並流
Three Parallel Rivers of Yunnan Protected Areas
中国南西部雲南省。7つの地理的保護区群を含みながら、アジアを代表する3つの河川の上流が併走して流れている170万ヘクタールのエリアが三江並流国立公園(Three Parallel Rivers National Park)です。揚子江 (Jinsha),メコン(Mekong)、サロウィン(Salween)の3川は標高6000m以上の氷河地帯から3000m以上も北から南に流れ下ります。またこの一帯は中国の生物多様性の象徴的な場所でもあり、貴重な動植物が見られます。
モンゴル (世界遺産初保有)/ロシア連邦
Mongolia / Russian Federation
 
ウブス湖盆地
Uvs Nuur Basin
モンゴル、ロシア(ツーバ共和国)国境上にある中央アジア最北の湖盆地ウブス湖。巨大で、浅く、塩分濃度が高いウブス湖(Uvs Nuur Lake)を中心として、乾燥地帯や草原地帯、氷河の高山地帯まで含む1068853ヘクタールの一帯は様々な生き物が生息する地域です。湖は、海鳥、水鳥などの楽園となり、山岳地帯は、絶滅を危惧されているユキヒョウや、山羊(argali)、アイベックス(野生のヤギ)などの貴重な生息域になっています。
スイス連邦
Switzerland 
サン・ジョルジィオ山
Monte San Giorgio
ルガーノ湖の南、緑に覆われた標高1096mのピラミッド型の山がサン・ジョルジオ山。ここを中心とした849ヘクタールの範囲が世界有数の化石発掘地域です。最も状態の良い海洋生物の示準化石から三畳紀中期(2億4500万年-2億3000万年前)の化石群と見られています。様々な種を含む1万以上の化石が出土しています。 特筆すべきは体長6m以上の骨格を含む魚性恐竜(ichthyosaurs)や、トカゲ類(他にもnothosaurs, placodonts, and the remarkable 'giraffe necked' saurian, Tanystropheusなど)の貴重で良好な状態の化石が出土しています。
ベトナム
Vietnam
フォン・ニャ=ケー・バン国立公園
Phong Nha - Ke Bang
National Park
ベトナムとラオスの境界に広がっている非常に広大なカルスト地形の地域は、総延長65kmにもなる巨大洞窟や地下川など地質学上特筆すべき景観があります。保護区は生物学的に高水準な巨大な熱帯林に覆われています。試験的に行われた動物調査では、65の固有種を含む461種の脊椎動物を確認しました。

新指定 文化遺産

国名 名称(英文) 概要
アフガニスタン
Afghanistan
(危機リストにも掲載) 
バーミヤン渓谷の
文化的景観と
考古遺跡群
The cultural landscape and archaeological remains of the Bamiyan Valley
古代からの文化の交流地アフガニスタンには様々な文化的遺跡が残されています。ここ、バーミヤン渓谷は1世紀から13世紀までの様々な文化的影響を受けた仏教美術が見られる場所です。主に5世紀から8世紀ぐらいまでの仏教石窟などが無数に残り、貴重な壁画なども多数確認されています。しかし、2001年3月。タリバン政権によって2つの大仏が破壊されてしまいました。現在も盗掘を含め状況はとても悪く、世界遺産指定されると同時に危機にさらされている世界遺産リストにも登録されました。
アルゼンチン
Argentina
ケブラダ・デ・
ウマファアカ
Quebrada de Humahuaca
アルゼンチン北部。アンデス山脈の一部となるケブラダ・デ・ウマファアカ(ウマファカ山峡)は、古くから主要な文化交易ルートとして存在してきました。南米のグランドキャニオンとも称される壮観な光景をもつこの谷が過去1万年以上前から重要な通商路であった様々な証拠も残されています。有史以前の狩りの跡や、インカ帝国時代(15-16世紀)の遺跡、19・20世紀の独立戦争の跡などが確認できます。
チリ
Chile
バルパライソの海港都市の歴史地区
Quarter of the Seaport City of Valparaiso
チリの首都サンティアゴから100kmほど北東に行った港町バルバライソ。16世紀に栄えたこの港湾植民都市はラテンアメリカにおける19世紀後半の建築様式の発展例が多数残されています。町には円形劇場の様に建物が配置されていますが、それが平原でよく見られるような教会の尖塔との対比とも重なり面白い光景を形作っています。工業化初期のインフラも良い状態で残されています。数多くのエレベータ、ケーブルカーなど多くの登坂施設も残っています。
チェコ共和国
Czech Republic
 
トゥシェビチのユダヤ人地区と聖プロコピウス教会
The Jewish Quarter and St Procopius' Basilica in Trebic
トゥシェビチの古いユダヤ人墓地と聖プロコピウス教会があるユダヤ人地区は、ヨーロッパでもよく保存された地区です。ここは中世から20世紀までキリスト教徒とユダヤ教徒が良い関係を築きながら共存していた好例です。代表的な建築物である聖プロコピウス聖堂(Basilica of St Procopius)は13世紀初期にベネディクト修道会の一つとして建てられました。この教会はこの地域の建築様式に西欧的な影響を与えました。
ガンビア
Gambia
(世界遺産初保有)
ジェームス島と関連する遺跡群
James Island and Related Sites
ガンビア川にある島、ジェームス島とその周辺サイトは、アフリカ世界とヨーロッパ世界が遭遇した場所です。ここは奴隷売買制度の開始と廃止に関わっており、初期のアフリカ政策の一端を垣間見ることができます。またここには17世紀の砦も残っており、植民地を巡る英仏の抗争跡も見ることができます。
インド
India
ビムベトカの
岩石保護区
Rock Shelters of Bhimbetka
ビムベトカの岩石保護区は中央インド高原の南端、ビィンディアン山脈(Vindhyan Mountains)にあります。密集した森の天然の5つの洞窟内の大きな砂岩が露出しているところに、4万年前の旧石器時代の壁画が残されています。周辺の21の村には現在も壁画の文化的影響が残されています。
イラン
Iran
タフテ・ソレイマン
Takht-e Soleyman
イランの北西部、火山山岳地方にあるタフテ・ソレイマンは「ソロモンの玉座」を意味している遺跡です。3世紀までに建造され、他にも6世紀から7世紀に作られたササン朝の神殿跡だけでなく13世紀にモンゴル人によって再建されたゾロアスター教の神殿もあります。ここの非常に重要なものとしては、火の神殿、宮殿などの配置などがあります。これは後のイスラム建築様式に大きな影響を与えました。
イラク
Iraq
(危機リストにも掲載)
アッシュール
(カルート・シャルカット)Ashur (Qal'at Sherqat)
アッシュール、現在のカルート・シャルガートは、北メソポタミアにおける乾燥地帯と引水農業地帯の境界という地理的にも生物学的にも特筆すべきチグリス川流域にあります。ここは紀元前14世紀から紀元前9世紀まで国際交易都市のアッシリア帝国の首都として存在しました。同時にアッシュール神信仰の宗教的な中心としての機能も持っていました。バビロニア人の侵攻により破壊されますが、1世紀と2世紀の間に復興されました。
イスラエル
Israel
テル=アビブの白亜の町−近代化運動
The White City of Tel-Aviv - the Modern Movement
イスラエルの首都(とされる)テルアビブは1909年に設立され、イギリス統治(1920-1948)の下、発展してきました。白亜の町(The White City)は1930年代初頭から1948年にかけてパトリック・ゲデス卿の計画を元に建設されました。建物は主にヨーロッパでデザインを学んだ職人によって設計されました。彼らは新しい文化的環境による近代化運動(the modern movement)が調和した建築様式を作り出しました。
イタリア
Italy
ピートモント州とロンバルディア州のサクリ・モンティ
Sacri Monti of Piedmont and Lombardy
北イタリアにある9つのサクリ・モンティ(聖なる山)は、16世紀後半から17世紀にかけて作られた他とは違うキリスト信仰をみせている、教会などの宗教的複合建築群です。精神的意義に加えて周辺の丘や森林、湖などの調和した美しさを兼ね備えています。建物には塑像や壁画など高い芸術的価値もあります。
カザフスタン
Kazakhstan
(世界遺産初保有)
ホジャ・アフメッド・ヤサウィ廟
The Mausoleum of Khoja Ahmed Yasawi
ホジャ・アフメット・ヤサウィ霊廟は、今のトゥルキスン、ヤシ(Yasi)の町にあり、1389年から1405年にかけて造られました。ペルシャ人の建築士は、一部完成していないこの建物で、巨大ドーム構造など、建築構造学的に例のないものを皇帝の監督の下に実験したと伝えられています。その結果考え出された工法は、Timurid帝国の首都Samarkandの建築に応用されました。今日、それは最も大きく、最も保存状態の良いTimurid時代の建築物の一つとされています。
メキシコ
Mexico
ケレタロ州のシエラ・ゴルダのフランシスコ会伝道施設
Franciscan Missions in the Sierra Gorda of Queretaro
シエラ・ゴラのフランシスコ会伝道施設は、18世紀中頃、メキシコでのキリスト教布教の転換期終盤に造られました。厳しい山間での施設建築は伝道の継続とアメリカのカルフォルニア、アリゾナ、テキサスの植民地化へ多大な影響を及ぼしました。宣教師と先住民族が協力した教会は壮麗に飾られました。修道院の周辺にはその土地固有の文化が育ちました。
ポーランド
Poland
リトル・ポーランド
南部の木造教会群
Wooden Churches of Southern Little Poland
リトルポーランド南部にある地方色豊かな木造教会群が指定されました。主に14世紀以降の建物ですが、その多くは中世教会の一般例であるローマカトリック教会とは異なる様式で建てられています。このような中世以来、東欧・中欧で一般的な水平な丸太を使う様式の建物は、その地方の名士がスポンサーになって作られました。しかし町の中央部には石を使って建てたので、こういった木造教会はほとんど存在しません。
ロシア連邦
Russian Federation
デルベントの城塞、古代都市、要塞建築物群
Citadel, Ancient City and Fortress Buildings of Derbent
デルベントの城塞、古代都市、要塞都市群は、カスピ海東西に広がるササン朝ペルシャ帝国の北部に位置していました。要塞は石造りで、山から海辺までの二本の平行した城壁によって構成されていました。デルベントの街は、これらの間に建てられて、中世都市の面影を残していました。ここは19世紀まで重要な戦略拠点になっていました。 
南アフリカ
South Africa
 
マプングブヴェの
文化的景観
Mapungubwe Cultural Landscape
マプングブヴェは、ボツワナとジンバブエに接する北部国境付近にあります。ここはリンポポ(Limpopo)とシャーシ(Shashe)の接点にあり、広大なサバンナの風景が広がる場所です。かつてここは聖山としてあがめられ、14世紀に廃棄されるまで、アフリカ大陸で最も大きな王国があった所でした。現在残っているものは、ほとんど手が着けられていない王宮跡と、周辺にある2つの初期の遺跡と同じように、400年以上に渡って、社会的・政治的な発展を描いた絵がある居住地域です。黄金などの副葬品も出土しました。
スペイン
Spain
ウベダとバエサのルネサンス様式記念碑的遺産群
Renaissance Monumental Ensembles of レbeda and Baeza
スペインの南、ウベダとバエサの2つの小さな町の都市形態は、ムーア人の9世紀から、レコンキスタの13世紀までのものです。16世紀にはルネッサンス様式が入ってきました。イタリアから入ってきた人間主義的な考えは設計を変え、そしてラテンアメリカの建築にも多大な影響を与えました。
スーダン
Sudan
(世界遺産初保有)
ナパタ地方のジェベル・バルカルと遺跡群
Gebel Barkal and the Sites of the Napatan Region
遺跡はナイル川の谷を60km以上の長さに渡って様々な考古学的遺跡を持っています。紀元前900年から、紀元前270年のナパタン、そして紀元前270年から、350年のメロテッィク等古代クシュ王国の考古学遺跡です。そこには墓や、ピラミッド、寺院や、ジュ挙地区や宮殿などが発見されている。
イギリス
United Kingdom
キュー王立植物園
Royal Botanic Gardens, Kew
1959年から宮殿併設の庭園として作られたここは、18世紀から20世紀の庭園芸術の重要な施設として存在し、世界で最も有名な植物園の一つになりました。世紀を超えて、全世界からここに集められた植物は膨大な量になり、植物学のみならず、植物の生産や芸術などに大きな貢献をしてきました。
ジンバブエ
Zimbabwe
マトボ丘陵
Matobo Hills
ここはジンバブエを広くカバーする花崗岩が多数露出している場所です。大きな丸石が先史時代(石器時代初期)から自然のシェルターとして存在し、それが人類の歩みと関係してきました。またここにはものすごい岩絵もあります。そして、ここは伝統的な社会活動や、経済活動にも神社や聖域をいまだ利用すると言うことで注目を集めています。
 

指定範囲が拡張されたサイト

ブラジル
Brazil
中央アマゾン保全地区群
Central Amazon Conservation Complex
2000年に登録された「ジャウー国立公園」を含む6,096,086ヘクタールのアマゾン保護区群は、より大きな保護区形成のため指定範囲が拡大されました。この指定によりアマゾンのマナティをはじめ、ブラックカイマンや、2種類のカワイルカなどの生育域も保護対象になりました。
中国
China
明・清王朝の王墓群
Imperial Tombs of the Ming and Qing Dynasties
ここは2000年に世界遺産リストに登録されましたが、今回2つの墳墓を追加しました。明の王家の埋葬地区の小陵と第十三陵が指定がされた。ここの設計は中国古来の風水に従った部分と、新しい考えの部分と両方が兼ね備えられ、実用的な芸術性が見られます。
パナマ
Panama
パナマ・ビエホの考古遺跡およびパナマ歴史地区
Archaeological Site of Panam・Viejo and the Historic District of Panam
ここは1997年にサロン・ボリバールを含むパナマ歴史地区として指定されましたが、今回、アメリカ本土を含め、ラテンアメリカでも最初のヨーロッパ人定住地としてのパナマ・ビポエの遺跡群が追加されました。この旧市街からはヨーロッパ人到来の1000年以上の前の遺稿も発見されています。