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 南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa

南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa

 

 

概要

一番の中心となると考えられる、スタークフォウンテン洞窟について概要を書きます。
石灰岩質の土壌でできているこの場所は、何億年という時間をかけ、鍾乳洞になっていたと思われます。おそらくその洞窟を200万年前の原人も見つけここで生活していたと考えられます。そんな場所が歴史上の舞台に上がるのは1896年、金鉱山の探索者による発見だっとようです。しかし、化石の発見はずっとあとで、主に単なる石灰岩の発掘場だったそうです。 最初の人類化石らしいもの発見は1925年、 レイモンド・ダート氏(Raymond Dart)による、「タウング・チャイルド」 (Taung Child)と呼ばれるアウストラロピテクス・アフリカヌス(Australopithecus africanus)の化石の公表でした。しかし一般の注目は低く、本格的に注目を浴びるのは1974年の ロバートブルーム氏(Dr. Robert Broom)とジョン・ロビンソン(John T. Robinson)氏による、「ミセス・プレス」(Mrs. Ples)と名付けられたアウストラロピテクス・アフリカヌスの女性のほぼ完全な頭蓋骨化石の発見でした。これはおよそ230万年前のものと考えられています。その後も260万年から150万年前と見られる地層から600個体分以上の化石が見つかっているそうです。
アクセス
スタークフォウンテン洞窟は、南アフリカの最大都市ヨハネスブルグから北西35kmの場所にあります。日本からヨハネスブルクまでは、キャセイパシフィック航空の香港経由や、ドバイ経由のエミレーツを使っていくのが一般的でしょう。英国航空やエールフランスなどヨーロッパのメジャーエアラインも飛んでいますので、ヨーロッパ経由で行く方法もありますが、とにかく遠いです。しかし本当の問題はその先です。「世界最悪の犯罪率」「リアル北斗の拳」などと揶揄されるこの街には公共交通機関がありません。正確に言うと市内ならばきちんとした路線バスがあり、庶民の移動にはトヨタ・ハイエースの大型版(南アフリカモデル名:Quantum)を使用したミニバスがあります。どこでも行けて非常に安いのですが、かなりの確率で犯罪に巻き込まれるそうです。「とにかく絶対に使うな」といろいろな人に言われました。長くなりましたが、ヨハネスの市内に着いたとしても、この洞窟を訪れるためには、一般的な日本人旅行者ならば①旅行会社のツアーに入る、②タクシー・ハイヤーなど車をチャーターする、③レンタカーで行く、が考えられます。ただし、ヨハネス市内では流しのタクシーを捕まえることはほぼ不可能に近く、仮に走っていたとしても「非常に危ないから絶対に乗ってはダメ」とも言われました。結局、信頼のおけるところで車かツアーの手配を頼むのが一番だと思います。
現地に向かうための準備
自分はヨハネスブルクに着いたのが日曜の早朝だったので、とりあえずホテルに向かい、荷物を預けながら「スタークフォウンテンに行きたいんだけど」と相談をしました。ホテルの受付嬢(気の良い黒人のオバサン)は「いつもならツアーデスクがあいてるけど、今日は休日でだめ」「公共のタクシーは使っちゃダメよ」「知り合いに車を出せるか相談してみるわ」と言い、なにやら電話をかけています。電話口ではアフリカーンス(ショナ語?)で話しているため、さっぱり聞き取れませんが、とにかく「洞窟といろいろ回って1500ZARって言っているけど・・・」「詳しくは彼に来てもらって直接交渉できるわよ」との事。南アフリカ初訪問の自分はとりあえず、OKを出しとりあえず彼に来てもらいました。待つこと10分。メルセデス・ベンツW203型の旧Cクラスで颯爽と現れた彼は自己紹介をし、その金額で洞窟とその周辺へ連れて行くことを約束しました。(書き忘れていましたが、自分たちは夫婦と小学生の子ども2匹の4人ファミリーです。単身ならばツアーなどを探して参加した方が安いと思いますが、自分たちならば4人いますので車を借り上げて動いた方が安くなる場合も多いのです。)
訪問した感想
いざ、車に乗り込み街を見た感想ですが「南アフリカ」に対して最初に抱いていたイメージが根底から覆される光景が広がっていました。確かに中心部は危険だそうです。しかし、同様に危険だと言われている南米に住んでいる自分からすると遙かに近代的で安全で、清潔な街が広がっていました。洞窟までは35kmとききましたが、高速を30分ほど走り、郊外を抜け、都合1時間少々で現地に着きました。実際、ドライバー氏と様々な話をしていたらあっという間に着きました。広大な敷地の中にビジターセンターがありました。順番的には併設の博物館を見た後、ガイドさんに連れられて洞窟の見学をします。地上から見れば普通の平原ですが、洞窟の中の鍾乳洞は見事なものでした。博物館の展示も、ガイドさんの解説もわかりやすく、質の高いもので「人類のゆりかご」の地を十分満喫できました。歴史好き、遺跡好きの人間にとっては大変興味深く楽しい場所でした。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa

【南アフリカの人類化石遺跡群】
「人類のゆりかご」と世界遺産マーク。スタークフォウンテン洞窟手前数キロの道ばたにありました。この標識の後、わかりにくいロータリーを数カ所、交差点を1カ所曲がらないと着かないので、個人的にはこの標識よりも「あと何キロ」「どこを曲がれ」の標識の方が良いような・・。

南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
洞窟入り口の立派な標識
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
ここで入場料を払います。大人R140(約1400円)、4歳から14歳までの子どもR80(800円)、学生R85。近く(と言っても15km)離れたもう一つの施設との共通入場券が大人R215、こどもR130。券を買う前にお姉さんから「これは摂氏15度以下の洞窟探検が含まれます。所要時間は最短で30分。最大85cmの場所をくぐったりしますが大丈夫?。」と聞かれます。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
まずはビジターセンター併設の博物館へ。量・質共に素晴らしく、この洞窟から出土した頭蓋骨を中心に、250万年から現代までの人類の歴史が丁寧に解説されています。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
ここから出土した化石が、人類史にとっていかに重要なのか分かります
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
非常に近代的な展示が多く、自分が抱いていた”南アフリカ”というイメージが覆されました。先進国と同等以上の内容です。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
大きくない博物館ですので展示をゆっくり見ても30分はかからないでしょう。そのうち係員の人が来て「では洞窟に行きましょう」と誘ってくれます。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
草原を数百メートル行くと、洞窟の入り口が現れます。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
ちなみにその入り口にはこんな看板が。「この見学で、怪我をしても、死亡しても一切責任は取りません」とな・・・。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
階段を下っていったところ。ガイドの方が先頭です。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
ここが重要な化石の発見現場だそうな。残念ながら奧は見学禁止。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
この洞窟はいわゆる鍾乳洞なので、おもしろそうな鍾乳石が多数。ちなみにこれは「ゾウ」と名付けられた岩。確かにアフリカ象の正面からの姿に似ているかも。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
全体が石灰岩でできている洞窟です。鍾乳洞と言ったら地底湖がつきもの。ここは「少なくとも長さ数キロにわたっています。最近、大学で調査をしましたがあまりにも深くて正確な深さを調べられませんでした」と言っていました。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
広くなっている場所で、こんな感じで解説してくれます。くどくなく、かつわかりやすい説明でした。ガイドはEmiさん。詳しいと思ったらWitwatersrand大学のの学生さんらしい。道理で詳しいわけです。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
洞窟内の様子。ちなみに自分のカメラ機材はそれなりに良いもの(フルサイズ一眼レフ+明るいレンズ)を使っているためこんな画像ですが、実際は真っ暗です。普通のコンパクトデジカメだと、ただの暗闇かと思います。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
同じ風景を200万年前のアウストラロピテクスも見ていたかもしれないと思うと感慨深いものがあります。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
見学路はかなり整備されています。南アフリカって南米諸国よりよほど先進国に近いと感じます。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
広い場所やアップダウンも多くあります。懐中電灯があってもいいかもしれません。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
大人だけでなく、子どもでもかがまないと通れない場所もあります。大きなバックは置いてこないと無理です。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
動物の骨や化石、さまざまな鉱物もありました。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
学術的だけで無く、商業的にもいろいろなものを探索したようです。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
出口付近にあるPHILLIP VALLENTINE TOBIASの碑。スタークフォウンテンの発掘に尽力し、ノーベル賞にも3回ノミネートされたそうです。白人ですが反アパルトヘイト運動も活発に行った方だそうです。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
同じく出口にあるRobert Broomの碑。アウストラロピテクスやホモ・エレクトスの発見者であり、猿人研究の第一人者です。ちなみに「チップを入れながら」(ここがポイント)この像の鼻を触ると願いが叶い、頭蓋骨化石の頭を触ると頭が良くなるらしい。
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【南アフリカの人類化石遺跡群】
洞窟を出ると草原をビジターセンターの方面へ地上を歩いて帰ります。発掘の現場が紹介されていました。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
重要な発掘現場。現在も発掘は続いており、金網の外からしか覗けませんでした。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
発掘現場の説明版。
南アフリカの人類化石遺跡群 Fossil Hominid Sites of South Africa
【南アフリカの人類化石遺跡群】
ビジターセンターとは別の建物があったので覗いてみたら、研究施設では無く、販売用頭蓋骨のレプリカの制作現場でした。